過去、高レベルのプレイヤーが何人もコロナタに挑み、ことごとく倒されているといううわさを聞いていたキャスケットには、自分よりもレベルの低いルーク1人が加わったところで、到底勝てる相手ではないことは容易に想像がついていた。

 おまけにいくら67レベルといっても、回復魔道士の自分は戦闘には向かない。

 しかし、だからといってキャスケットには、負けるつもりはさらさらなかった。

 最初に広場でコロナタと遭遇したとき、現在ログインしているフレにすばやく救援のメッセージを送ると、運よくその中の二人がこの近くにいてすぐに向かってくれるとのことだった。

 ―ルークがパーティーに入ろうとしています―というテロップが目の前に流れた時、キャスケットは「これで少しは時間稼ぎができるはず」と小さな希望さえ脳裏をよぎっていた。

 いまやフレの2人も合流し、パーティーメンバーは5人。

 勝機を確実に掴んだとキャスケットは思った。

 コロナタの足元では、ルークが剣と魔法を交互に使いながらコロナタの気を引き、その隙をついて背後から、ユイの戦士タイプのオートマトンとフレの狩人が確実にダメージを与えている。

 コロナタの攻撃をルークに集中させることによって、キャスケットの回復魔法もかけやすくなり、味方全員に強化魔法をかける余裕すらできた。

 となりの黒いローブの魔道士は、余裕の表情でコロナタの真っ白な巨体に向けて、攻撃魔法の火の玉を連続で飛ばしている。