シャンシャンシャン、シャンシャンシャンというリズミカルな鈴の音。

 続いて、お馴染みのクリスマスソングをアレンジしたオルゴールの音が聞こえ始めた。

 さきほどからずっと、小さな可愛らしい真っ白な雪が、途切れることなく天から舞い降りてくる。

『トルーワ火山』を北に進んだ『メリーの草原』。

 薄く降り積もった雪の間からは、色の抜けた細い草の葉がぴょこぴょこと飛び出している。

 雪にカムフラージュされた羊たち。

 サンタのコスチュームに身を包んだ数人の素材狩りのプレイヤーが、その羊たちの羊毛を求めて走り回っている。

「こんにちは。ミリンさんですよね?」

 遠慮がちに掛けられた声に、ミリンはゆっくり振り返った。

 白地に紫のラインが入ったローブを身に纏った回復魔道士が立っていた。

「あぁ、えっと…」

「キャスケットです。ユイがいつもお世話になってます」

「いいえ、こちらこそ。長い間、初心者警備隊おつかれさま」

 ミリンの言葉にキャスケットは少し寂しそうに微笑んだ。

「今日は、エプロンじゃないんですね」

 キャスケットがミリンのサンタ服を見つめる。

「太陽神界のミリンさんといえば、港町の桟橋にエプロンと決まってるのに」

「似合ってない?(苦笑)」

「そんなことはないけど、ミリンさんだって分かりにくかったわ(笑)」

 この時期、ゲームの製作者側から無料配布されたサンタ服やサンタ帽を、季節物ということもあり、ほとんどのプレイヤーが装備している。

「俺のサンタ服はズボンだけど、女のキャラクターのサンタ服はミニスカートだよね?なんで着ないの?すごく似合いそうだけど」