「まあね。もっといい方法があったとでも言っておこうか」

「それって?」

「ここ2週間で君が頑張ってやってきたことだよ」

 高山先生は結衣の向かいの椅子に腰をかけ、結衣を見つめる。

「もう足の痛みはそれほど無いだろ?」

「はいっ、最初のあの息が詰まるような痛みはないです」

「よかったじゃん」

 結衣ははっとして先生を見つめる。

 先生はめがねの奥から確信に満ちた瞳で結衣を見つめ返す。

「……よかった」

 結衣はぽつりと言葉に出してみた。

「よかった」

 そうしたら、もう堪らなく嬉しくなった。

「よかったぁぁ」

 このまま頑張れば、本当に良くなる。

 回復を実感した今だからこそ、はっきりとそう思える。

「わたし、健康な体になれるんですね」

「うーん、何を健康というかによる。だって、考えてごらん。生まれてからずっと健康を意識してそれに取り組んできた人には、絶対に追いつけないだろ?それに、何度も言うようだけど、君はリハビリを始めて2週間なんだから」

「それは…そうですよね」

「そう。健康な体作りは一生続けなければいけないことだから。僕の仕事はね、人の痛みをとることじゃないんだ。狩野さんのような人が一生元気に生きていけるように、手助けすることなんだよ」

 先生が立ち上がるのに続いて結衣も立ち上がる。