「ふぅ」

 結衣はかばんから携帯を取り出しながら、ベットに倒れるように横になった。

「大人の社会って、やっぱり嫌いだな」

 結衣の目の前に、バイト先で会ったお局の顔と、カウンセリングの医院長の顔が現れる。

「こんな人たちがいる社会で、私はどうやって生きていけば……」

 結衣の問いに答えるように、今度は整骨院の高山先生の顔が現れた。

『―――この怪我の原因も、いま感じている苦痛も、周りが悪いわけじゃない。すべて、君が悪いんだ』

 結衣は仰向けになって天井をじっと見つめる。

「また、私は人のせいにし始めてる。社会のせいじゃないんだ。あのカウンセリングに通うことを決めたのは、私だし。バイト先のお局だって、私がもっと強ければきっとなんでもなかったんだ」

 携帯の電源をオンにする。

 整骨院に入ってからずっとオフにしたままだった。

 携帯は1度ふるえてから、ライトがつき、メールを受信し始めた。

『新着メール 1件』

 結衣はメールを開くと同時に「あっ」と声を上げる。

「これって…」

 今朝、『オートマトン』からログアウトした後、アレキサンダーからのメッセージを読んだ結衣は、整骨院に向かう前に、ルークのことを相談したメッセージと共に、結衣の携帯アドレスをアレキサンダーのパソコンに送っておいた。

 どうやらその返事が携帯に来たようだ。

 差出人の欄には名前は表示されていない。

 知らないアドレスでタイトルは『PK祭りとギルドの件』