(あんな風に怒られると思わなかった)

 結衣は自宅の玄関の扉に手をかけながら、息を吐き出す。

(でも、行ってよかった―――)

 ついさきほどまでファミレスで祥平と食べていたオムライスの味を思い出しながら結衣は扉のうちに入る。

(オムライスもおいしく食べれたし、今日は、いい日だったなぁ)

 結衣はリアルで久しぶりに達成感を感じていた。

「おかえりー」

「ただいまっ」

 結衣が靴を脱いでいると、母が硬い表情で駆け寄ってきた。

「結衣、どうだった?」

「うん、良さそうな先生だったよ。今日の夕飯、皆は何食べたの?」

 結衣はフローリングの上を歩きながらリビングに向かう。

「夜、みんなはビーフン」

「私の分ある?」

「夕飯食べてきたんじゃないの?」

「食べたけど、今日はもっと食べたい気分なの」

 そういえば、バイトでの事があってから、おなかがすいた記憶が無かった。

「なんだか、おいしくって、食べてると嬉しくって」

「そう。いいことよ、どんどん食べなさい」

 母は結衣の骨の出た薄い背中をドンと叩いた。

「いたっ!」

「そうそう」

 ビーフンをよそいながら、母はテーブルの上の封筒を示す。

「カウンセリングの病院から手紙が来てたわよ」