電車で20分、駅を出て徒歩で10分弱。

『高山整骨院』の看板を見つけて院内に入り、受付を済ませ、狭い待合室の椅子に祥平と並んで座った。

 奥の薄緑色のカーテン越しに、先生と患者のやり取りが聞こえる。

「最近太っちゃって、こんな三段腹、先生に見られたくないわ」

 4、50代の女性の声がしたと思うと、今度はそれよりも若い男性の声が聞こえてくる。

「三段腹?かわいいじゃない。……四段ならもっとかわいい。……よしっ!あとはそっちの椅子で腰を―――」

 結衣が祥平を見上げると、祥平も何か訴えるように結衣を見下ろした。

「優しそうだね」

 結衣の言葉に、祥平が小さな声で返す。

「俺?」

 結衣が変な顔をして、意思表示をしているとカーテンが開いて、颯爽とメガネをかけた男性が現れた。

 受付で何かを確認した後、くるりと結衣を振り返る。

「狩野結衣さん?」

「はい」

「電話くれたのは君だね。奥においで」

 結衣は祥平を置いて立ち上がり、ゆっくりと先生についていく。

「そこに仰向けに寝て」

 靴を脱いで、カーテンの中の長いすに言われるままに横になる。

「前に通ってた病院の先生に、ケガについてはなんとも言えないって言われたんだっけ?」

「はい」

「それはひどいよね」

「……私治りますか?」

 先生は結衣の足を軽く持ち上げる。

「それは、これから診察してみてから判断する」

(それはそうか)

 結衣は緊張しながらも、言われたように動き、質問に次々に答えていった。