「キャスケさんにメールしなきゃ」

 結衣が椅子から立ち上がって、ベットの枕元に放り出していた携帯を手に取る。

「っ!!」

 体の痛みも確かに、ここにある。

 結衣が苦笑しながらメールのボタンを押したとたん、携帯に着信がかかった。

 すぐに通話になる。

『もしもし?結衣?』

「ん?……もしもし?祥平?」

『うん、朝早くにごめんな』

 結衣が机の上の時計を見れば、午前7時を挿していた。太陽神界には1時間半もいたらしい。

「ううん、どうしたの?」

『見つかったんだよ!』

 祥平の声は朝からテンション高く、携帯を少し放してみても十分聞こえてくる。

「なにが?」

『あれからずっとネットで捜しててようやく見つかったんだ』

「だから、なにが?」

『ふふん♪』

 祥平は十分に間を置いてから、言葉を発した。

『結衣のケガを治せそうな医者』

「うそー!!」

 ユイは窓辺まで歩きレースのカーテンを開ける。

『本当だよ、その医者が書いてるブログがランキングの上位に入ってて、読んでみたらけっこう良さそうなんだよ。今から電話番号とホームページのアドレスをメールで送るから、診療時間になったら、とりあえずどんな治療するのか電話して聞いてみな。それで良さそうだったら、今日中に、俺と行ってみよう。大丈夫、十分行ける距離だよ』

 切れた携帯を手にぶら下げたまま、結衣は窓から遠くの山を見据えた。

 いつもならのっぺりとした青い色の山がぼーっと見えるだけなのに、燦然と輝く朝日に照らされた山の木々は、その葉の一枚一枚まで、それぞれの違った色を力いっぱい主張させていた。

(……自分の事をしっかりできてないと、きっとルークのことも助けられないよね)

 結衣はきりっと目を見開いて、たくさんの色であふれる世界をまっすぐ見つめた。

「まずは―――」

 結衣の気持ちを駆り立てるように、さっそく携帯が医者の情報を載せた祥平からのメールを受信し始めた。