「知りません」

 ユイはぶっきらぼうにそう答える。

(もしかして、ルーク、私が先にログアウトしてたら、こいつらと戦う気だったとか?いつ、こうなってもいいように剣を抱えてたの?)

「私、いまログインしたばかりなので」

「おっかしいな」

 たずねてきた戦士の格好をしたプレイヤーは他のプレイヤーの元へ引き返していく。

「偽の情報だったのか?」

「今回の祭り、想像してたより大きくなっちゃったからな。情報の真偽の判断がつかなくなってきてるな」

「もう少し捜してみるか?」

 来たときの殺気はほぼ感じなくなったが、まだ群れを成したプレイヤーたちからは気持ち悪いほどの執着心が流れ出ていた。

「どっちがモンスターだか、分からないわね」

(1回ログアウトして、キャスケさんにメールしてみよう)


―――30秒後にログアウトします。


 ユイは高い天井から流れ落ちてくる真っ赤なマグマを見上げながら、ルークを思う。

(キャラクター作り直せばいいって本気で言ってたとしたら、またお節介だって言われるかな。それに、私が関わろうとすればするほど、もしかしてルークを傷つける結果になるかもしれない。……あああ!もう!そもそもPKなんてしてるから悪いのよ)


―――20秒後にログアウトします。


(……受験かぁ、ルークもリアルの人間だったんだなぁ。それにしても、さっきのルークの言葉。いままでPKってストレス解消のためにやってるのかと思ってたけど、ルークは、本当は寂しかったのかな?)


―――10秒後にログアウトします。


(ああ。わたしは、人のことばっかで、リアルの自分のこと、なにもできてないや。祥平に約束したんだから、がんばらないといけないのに。……ゲームのキャラクターは簡単に消して、作り直すことができるのに、リアルは、そうはいかないのね)


―――ログアウトしました。