「ユイ、いますぐログアウトしろ」

 ルークは横穴のほうを見つめたまま言った。

「え?何を突然」

「もう2度と俺に話しかけるな」

「何よ!あんたそうやっていつも勝手に決めて、1人で行動するからだめなのよ。もう私、退院したんだから、ログインしようと思えばすぐできるから大丈夫。私が守ってあげる」

「は?べつに、お前みたいなのに守って欲しいから言ったわけじゃない。……俺はただ、『オートマトン -Online-』を辞めるときに……別れを言う相手がいないのが、嫌だっただけだ」

 横穴から響いてくる声が徐々に大きく、多くなっている。

「まさか本気で辞める気なの?!待ってよ、キャスケさんに警備隊のこと相談してみるから」

「あいつはもう警備隊じゃないから、言っても無駄だ。俺は……別に、誰かに助けてほしかったわけじゃない。いいんだよ」

 ルークは、ふっと気が抜けたように軽く微笑んだ。

「キャラは作り直せばいいだけだから。それに俺もリアルでこれから受験だし、そう始終、今までみたいにログインできなくなるんだ」

「受験?……うわぁ、うそでしょ、年下だったの?なんかショック」

「なんだ?お前、年上だったのか?!!!絶対俺より下だと思ってた。っていうか、早くログアウトしろよ!!」

「絶対嫌よ!」

「なら俺がする!!―――ユイ、俺のことが心配なら、何か聞かれても俺とは関係ないって言えよ」

 ルークはそういったとたんに、ユイの目の前から掻き消えた。

 それとほぼ同時に、ドサドサとプレイヤーたちが入ってくる。

 正常にログアウトするには30秒かかるはずなのに、ルークは強制的にパソコンの電源を落としたのだろうか。

「あれ?ここにいるってあいつら言ってたよな?」

「ああ」

「おっ、あそこに、からくり士がいるけど?」

 ざっと15人ほどのプレイヤーがユイの方へ注意を向けた。

「すみませんが、この辺で祭りの主、見ませんでしたか?」

 そう言いながらプレイヤーの1人が近づいてくる。

「マツリノヌシ?」

「祭りの主。今、PKしてネットで晒されてるあの……」

(なに、こいつら、単なるイジメのくせに、祭りなんて言ってるの?!!!)