「何よ、あれ!!!!!私が助けなかったら、全滅だったって言うのに!!」

 いきり立つユイにルークが後ろから言葉を投げる。

「怒るぐらいだったら最初から助けるなよ。そもそも、ミッションっていうものはゲームの楽しみの1つなんだから、難しければ難しいほど良くもあるんだ。あんな風に、突然助けたりするお前が悪い」

「何よ、ルークまで!!あんたがあいつらの肩もってどうするのよ!そもそも、なんであんな事言われなきゃならないの?!!!」

「そうやって、すぐ人のことに首突っ込むのが、うざいんだよ」

 ルークはきびすを返して、ドラゴンの巣穴らしき横穴に戻っていく。

「ちょっと!!まだ話し終わってないのに!!」

 ユイは立ち尽くしたままのアカネに向き直る。

 明らかに、雰囲気が暗い。

「アカネちゃん、ごめんね」

 アカネの様子を見て、ユイまで気分が激しく落ち込んできた。

「すごい余計なことしちゃったみたい。ほんとごめんね」

 アカネはユイをちらりと見て、口を開く。

「ユイさん。ユイさんは、知らなくて、あの人をとっさにパーティーに誘ったんですよね?」

「なんだか、さっきから話が見えないんだけど。ルークはちょっと性格に問題あるかもしれないけど、そんなに関わったらやばいとかいうレベルではないと思うよ。まあ、PK(PlayerKiller)自体は、私は絶対反対なんだけど、でもPKは特に規制させてるわけじゃないし、ゲームの遊び方も価値観も、基本的には自由だと思うし」

「ユイさんは、分かってない…」

 アカネは声を硬くしながら、ユイを見上げる。

「あの人は十分関わったらやばいレベルなんです!私も…もしかしたら、今回のことでキャラクター名、ネットで晒されるかもしれない…だから、ユイさんも自分のキャラが大切だったら……あの人とは関わらない方がいいです」

 アカネはうつむいたままユイの前を足早に通り過ぎる。

「アカネちゃん!」

「……ネットの『オートマトン -Online-』の交流掲示板とか見たら、すぐに分かると思います」

 背を向けたまま、吐き出された言葉をユイはかろうじて聞き取る。

 アカネはそのまま振り返らずに、『トルーワ火山』を港町に向かって走り出した。