ユイはかつて、アカネや調理人のミリンやPKのルークと共にドラゴンを倒した戦いや、アレキサンダーやキャスケットたちと『コロナタの森林』で大猿を倒した戦いを頭の中で必死に思い出そうとしていた。

 ソロの戦い方とメンバーのいる戦い方は全く違う。

 ソロの戦いではプレイヤー自身の戦闘能力の有無で勝敗が決まるが、メンバーのいる戦いでは、回復魔道士は回復のみ、戦士は攻撃のみというように、それぞれが持つ能力に合った役割に徹することで初めて強さを発揮する。

 逆に言えば、1人が1度でもその割り振られた行動を間違えば、全員の死に繋がってしまう。

「っ!」

 ユイは戦況を見て軽く舌を打つ。

(これじゃ、パーティーの力が出せない)

 他初心者のレベルがあまりにも低すぎて、攻撃がほとんど当たっていないのだ。これでは、回復薬を除く、他すべての役割をユイがしなければならない。

(ううん、大丈夫。勝てるわ)

 ユイがアルメェールと共に、前後からドラゴンにきりつける。

(落ち着いて思い出すのよ、みんなの戦い方を)

 ルークのようにフェイントをかけながら時に残酷にきりつける。

 キャスケットのように冷静に状況を判断し、仲間の動きを良く見る。

 ミリンのように道具の効果を活かしながら、キャラクターの潜在能力を最大限に発揮する。

 そして、アレキサンダーのように、目の前の敵を、確実に倒す!!

 ―――そこまでしても、ドラゴンとパーティーの力はほぼ互角だった。

 一瞬でも気を抜けば、間違いなく全滅する。

 そのとき、集中力を増したユイの視界に、一瞬幻覚のようなものが見えた。

(……ルーク?)

 赤いレギンスの男が、ドラゴンの巣穴から出てきて、こちらを見つめている。

(幻覚じゃない!!)