さんざんだった。

 痛みでそのまま硬直してベットに倒れこんだが、カバンは確保できた。

 もとのように仰向けでベットに横になるころには、痛みでぎゅうとつむっていた目から涙があふれ出ていた。

 吐き気を我慢しつつ、あがった息を整えながら、じっと天井を見つめる。

(どうなっちゃったの、わたしの体。これで異常がないってどういうことよ)

 それから何時間たったのだろう。

 夕食が運ばれてきても起き上がれず、痛みで食欲もわかず、結局水だけ飲んで脱力したままベットにずっと倒れていた。

 ごそごそと部屋の住人が動く音がする。

 声の種類、部屋の大きさから察するにこの部屋には私を含め6人の患者が入院しているらしい。

 しかも入院患者はおばあさんばかり。整形外科の病室とはこんな感じなのだろうか。

 夕飯から少ししか経たないうちに消灯の準備がはじまった。

 歯を磨きに行く音や遠くのテレビの音、トイレへ向かう車椅子の音。

 私は手だけを動かしてカバンから携帯を取り出した。

 未読のメールや不在着信は今日会うはずだった美香たちからのものだった。

 どうやら母が気を利かせてみんなに連絡してくれたらしい。

 みんなに短い文章で返信した後、キャスケットにもメールを送った。

 携帯の時計は9時半を表示していた。

 パタパタパタと、看護師が病室に近づく足音がした。

「おやすみなさい」

 そう言いながら看護師によってあわただしく病室の電気が消される。

「「「おやすみなさい」」」

 同室から数人がそれに答えた。

 開け放たれた扉からは廊下を照らす蛍光灯の明かりが、白々と差し込んでいる。

 扉に1番近いベットに横渡る結衣には、まぶしすぎるくらいだ。

(眠れる気がしない……はぁ『オートマトン』に入りたい)