痛みが出ないように1ミリずつ頭を起こして、ベットの周りをできるだけ見回す。

 どうやら左側のカーテンの手前、隣のベットとの境に収納椅子があるらしい。

(あの中かな?……っていうか、わたし、立てるの?そういえばトイレどうするんだろう、まさかこのまま?……いやいやいや、立てるよね)

 さっきの経験からして、上半身をベットに垂直に起こそうとすると激痛に襲われるようだから、このまま体を横にスライドさせて、右足の股関節をできるだけ曲げないようにしたまま、ベットから床にまっすぐ足を下ろせば痛くないはず。

(やってみよう)

 ズルズルズルと息を止めて慎重に仰向けのままベットの端まで移動する。

(いっ!!!……もう、すこし)

 左足をベットから出して床のすぐ上で止め、右足はまっすぐにしたままゆっくりと床の方へ移動させる。

(よし、このままゆっくり立つ)

 ベットの端を掴んで、ゆっくりと両足を着地させた。

 成功。

 ふぅ、とため息を出して、一息つく。

 ここからが本番だ。

 眼下の収納椅子からカバンを取り出さねばならない。

(めんどくさい。もう我慢して一気にやっちゃおうかな)

 椅子の腰をすえる部分を持ち上げて、中に入ってるだろうカバンを取り出し、再びベットに横になる。たった、それだけのことだ。

(早くやれば一瞬で終る)