次の瞬間、甲高い音を発しながら殺人的な威圧感を持った自動車が右から迫ってきた。

 結衣は衝撃の瞬間、飛んでいると思った。

 流れる景色を見れば、地面から1mもない高さだけれど。

 夏の夕暮れに照らされた遠くの山が、民家の間から横向きに見えた。

 ……。

 熱いアスファルトが頬に触れた。

 視界の中で、真ん中の焦点を残すように、外側から黒い部分が増えていく。

 初めて見る光景だった。

 この吐き気と息苦しささえなければ、いつまでも見ていたい。

 そう思わずにはいられないほど、小さくなっていく視界の中心の景色はキラキラと輝き美しかった。

 まるで小粒のダイヤを散りばめたようだ。

 それにしても、あぁぁぁ。

 風が冷たい。