「なぜだか分からないけれど、彼はまだどこかで生きているような気がするの。……冒険者さん、わざわざ『神木の島』まで足を運んでくれてありがとう。これはお礼よ、この『深海のピアス』は彼が漁に出る前に置いていったものなの。このピアスを持っていると、寂しさや切なさから開放されると言われて、なかなか会えない恋人に贈るプレゼントととして昔から大切な人への贈り物とされてきたわ。わたしはこれにすがって今まで彼を待ち続けてきたのだけれど、もうそれも終わりにする。冒険者さんのような勇敢な人になって、今度は自分の足で捜しに行くわ」

　ユイは『深海のピアス』を手に入れた瞬間に決心していた。

　大切なフレであっただろうアレキサンダーの最後のログインに立ち会えなかったキャスケットにこのピアスを渡そうと。

「ユイ、ありがとう」

　キャスケットは心地よい風の通り過ぎる『メイの草原』の真ん中で、ユイに柔らかく微笑んだ。

「どういたしまして」

　結衣はキャスケットの笑顔を見て、こみ上げてくる感情を抑えながら、パソコンの画面を見つめ、ユイというキャラクターで精一杯楽しさを表現するように体を動かした。