「あ、言っとくけど理由は聞くなよ?」


「そんなの……突然言われても聞けないよ……。」


「悪りぃ……。」


「聞くなって言わないで教えてよ……。私……会いたい。毎日郁哉に会いたいの。わがままかもしれないけど。」


「………。」


うつむいて黙る郁哉。

郁哉のバカ。


急にそんなこと言われても……無理だよ……。



「彼女だとしても気にしないで言って。毎日同じ時間に帰るのって、彼女か誰かに会いに行ってるんでしょ?」


ずっと気になってた待ち合わせ相手。

きっと言ってくれないけど彼女。


こんな優しい人を好きにならないわけない。



「はは。彼女?俺に彼女がいるって?バーカ、いるわけねーだろ?」


「……違うの?」


「いねーよ。つーか待ち合わせなんてしてねーし。」


なんか心のどこかでホッとしている自分がいる。


「でも……この前誰か郁哉を迎えに来てたよね?」


そう……あれは空耳なんかじゃない。ちゃんと聞こえたよ?


「この前……?ああ宮沢さんね。」