「ほら、挨拶しなさい」

「…東条 竜哉です」

「水瀬 唯愛です…」



あたしは俯いた。
これ以上は目を合わせられない。
それに、彼の表情も怖かった。
笑顔がなかった。



人見知りは続いた。
話すのは得意じゃない。

東条さんとも上手く話せない。

名字はまだ変えないらしい。
学校的にも混乱を招くかもしれないから。



東条 竜哉はとても頭が良かった。
勉強が苦手なあたしにとって宿題が苦痛だった。
分からなかったから。
でも、誰の手も借りずにいつもなんとかしてた。



…でも、この日は違った。
一緒に住んでても全然話さない兄があたしの部屋に来たのだ。