あれは梅雨の時期だったね。

傘を忘れていた拓哉が下駄箱で困っていたのは。

大人に怒られた子供みたいな表情で立ちすくんでいた。

あの時初めて人間らしい表情をしていたから思わず笑っちゃったよ。

梅雨時だっていうのに傘を持ってきていないのもなんだか妙に面白くって。


「どうしよう、、、急に声かけたら変に思われるかな」

私はなかなか声が掛けられなくて拓哉を電柱の陰で観察している。

迷惑かな?
でも今傘開いて出て行ったら無視した感じになっちゃうしチャンスじゃない?

とも思って。