ため息をついた私は、そろっと工藤くん
の寝顔をのぞきこんだ。
閉じた長いまつげ。
工藤くんのシュッとした瞳はヒョウ
みたいに存在感があるけど、
それがまぶたに隠れると、こんなに
か弱い感じになるのだと初めて知った。
(なんか、かわいい…)
不覚にもそんなことを思ってしまった。
起こすのももったいないな。
ふと見ると、工藤くんの手の甲に小さな
ひっかき傷があるのに気づいた。
親指の付け根近くに赤みを落とす
ひっかき傷に、そっと手をのばす。
指先がふれるかどうかの時、急に
人差し指をきゅっとつままれた。
ねぼけたのかな。
と思った。
でも、工藤くんが目をあけていることに
気づいて、胸がどきんと音をたてた。