けれど今の私は、宙の手を振りほどいて田中くんの所に行く勇気なんてなかったんだ。



いいや違う、私はこんな状況から逃げ出したかったんだ。



「宙…あり「いいよ、喋らなくて」」



宙にお礼を言おうとしたら、私の言葉を空の言葉で塞いだ。

私の手を引っ張り走るだけで、決して後ろを振り返らないのは、私を気遣っているんだ。



それからどれぐらい走ったのだろう。

私は宙に連れてかれるまま、体育館裏へと来ていた。



そしてそこで宙の背中に顔を当てて、静かに涙を流したのだ。



「…彩…無理するなよ…」



「うん…ごめんね」



心配してくれることに対して、謝ることしかできない。



「…アイツが原因なんだろ?」



「…」



宙はドンピシャの質問をしてきた。

この質問に対してどう答えたらいいのか分からず黙りこくる。