「…五十嵐 太陽。」
そう男はつぶやいた。
「え?」
「俺の名前、五十嵐 太陽。」
五十嵐…太陽 (いがらし たいよう)
って…
「あの五十嵐 太陽!?」
「ブハッ…なんだよ、知ってんのかよ」
驚いている私を見て男は吹き出した。
初めてその名前を聞いたのは中学校1年生の時。
隣の席のヤンチャな男の子
如月 流星(きらさぎ りゅうせい)
とその友達たちが
『五十嵐 太陽がまた学校1つ潰したって。』
そう聞こえた。
授業中に「ねぇ、五十嵐 太陽ってそんな凄い人なの?学校1つ潰すって理事長か何か?」
そう聞いた私に流星は
「は?魅音…もしかして五十嵐 太陽知らねぇのか? 俺たちが住んでる東京の頭って言われるぐらい喧嘩が強いんだ。
1人で暴走族も潰すし、
この辺の不良グループの頭だ。
あの強さは本物だ」
そう言っていた。
その日から周りに目をやると至る所で女の子も男の子も『五十嵐 太陽』と言っている事に気づいた。