ほんのちょっと、悔しいなと思っただけ。 ちょっとだけ、張り合ってみたくなっただけだ。 「……ねえ、百井くん」 「なんだ」 「実結先輩、今頃どうしたかな?」 聞くと、数秒の間があってから「ああ、どうしたかな」と百井くんから返事があった。 それきりふたりとも黙ってしまって、けれどさっきよりきつく抱きしめ合いながら、わたしたちは、きっと同じことを思ったはずだ。 --どうか先輩の恋が、最後は笑って前を向ける結末で終われますように。