「ふざけないでよ。チャラ男」




初対面でいきなしの告白。


かと思いきや、受験勉強の面倒みて、ですって?




いい加減にもほどがあるよ。




私だって塾には行けなかった。

でも、血のにじむような努力をして、合格を勝ち取ったんだよ?



今だって、すごく苦労してる。



むしろ、受験勉強以上の苦労を、毎日歯食いしばって必死にこなしている。




なのに…。



それなのに…!




私のことが好き?

どうしてあんたみたいなチャラ男が私なのよ。

そんなの見え透いた嘘に決まってるじゃない。

嘘言って、人にすがろうとするなんて。




最っ低。




「あんたみたいな男大っ嫌い。今すぐ帰ってよ」




ミンミン…。




私と多希の間にできた沈黙の中、蝉だけがやかましく鳴いていた。




ゆっくりと、多希は顔を上げた。




へにゃらとした表情は消えて―――。




茶髪の間からのぞく目が、まっすぐに私を見下ろしていた。