「親父とは店を継がない代わりに大学第一志望受かるって約束したんだ」

「ふぅーん」

「だから今猛勉強してるんだけど、やっぱひとりだと難しくて。でも塾とか行く余裕ないし」

「それで、私を頼りに、と?」

「だって、俺の勉強みるくらい、あんたならなんてことないだろ?だってすっげー頭いい大学行ってるし」




私が通っている翔都大学は、この区域では一番の難関校と言われている。


その大学内でさらに最難関といわれているのが翔大医学部。



現在私が通っている学部だ。




って!



この人なんで私の行ってる大学知ってるの…!?


ぞぞーとなった―――けど、まぁよく考えてみれば、私がそこに通っているのは商店街中の誰もが知っていることだった…。



「すげぇよなぁ、あんな難しい大学に一発で入っちまうんだから。『この商店街から出た突然変異だ!』ってみんな言ってるよ」



そんな…人を謎の生物みたいに言わないでよ…。



「俺もなにがなんでも第一志望に受かりたいと思って頑張ってんだけど…やっぱ勉強はしんどくてさ。でも好きな人に教えてもらえるんなら、がんばれるかなーって思ったんだよネ」



急にざっと一歩下がると、多希は茶髪頭をぺこりと下げて、手を差し出した。



「お願いしまっす!お付き合いを前提に、べんきょー教えてください」



ぱしっ



私はその手を速攻で叩き落とした。