私はひとまず子どもたちに勉強を始めるよう言い残すと、多希を会館の外へ追い出した。


背中をぐいぐい押されながらも、多希はなおも追い縋ってきた。



「ねー頼むよーせんせー」

「うるさいうるさい早く出て行って!子どもたちの邪魔!」

「そこをなんとかっ」

「ならない!第一、受験勉強より店の手伝いを優先させた方がいいんじゃないの?貴方、商店のひとり息子でしょ?どうせ将来は店継ぐんでしょ?」



「継がないんだって!」



くるっと反転して多希は私と向き合った。



「俺、将来は別の職に就くつもりだから!」



ふぅ。

こういう人って、とりあえず大学は入ったけど結局遊び呆けて就職できなくて、仕方なく実家を継ぐってオチがほとんどでしょ。まぁ偏見だけど。

それならご両親に無駄なお金使わせるより、最初から実家を継ぐための修業をした方がいいんじゃないかと思うんだけどなぁ。

まぁこの茶髪くん…多希くんは、一応将来の希望があるらしいけど。




「別の職ねぇ。…ホストとか言わないでよ」

「言うかっ」



ふーぅと溜息めいた一呼吸をすると、多希はまっすぐに私を見つめた。