こわい…。



思わず、どきり、と緊張を覚えたけれども、私は強気を保ってにらみ返す―――。




「…ふぅん。やっぱ想像してた通りの勝気だな。落とすの、すげー大変そう」




「…は?」




苦笑いを浮かべて、多希がゆっくりと近づいてきた。



高い上背に陽射しがさえぎられ、私は多希の影に覆いつくされる―――。



思わず後ずさった。



けど、会館の扉にサンダルのかかとが当たって―――。



はっとしたと同時に、多希の両手が扉についた。



長い両腕と大きな身体に、逃げ道を遮断されてしまう…。




「けどさ、やっとここまで近づけたんだ。あんたのこと、絶対に諦めないよ」




なによ…そのセリフ。



歯の浮くようなセリフ。




けど、見惚れそうになるくらいキレイな顔は、真剣そのもので―――。



射抜くようなまなざしは、息苦しいくらい熱くって―――。



急激に打ち鳴り始めた鼓動をごまかすように、私は声を張り上げた。