「姫華ありがとう♪ そういえばさ、佐野くんと叶が付き合ってるらしいよ!」
「やっぱり!? 私、ちょっとだけ付き合ってるのかな〜とは思ってたんだよね」
「……姫華は悲しくない……の? あんなに好きだったのに……」
そう。姫華はこの前まで、佐野くんのことが好きだったのだ。
「う……ん。悲しいよ? でも……」
「……でも?」
「でも今は違う好きな人がいるから。前からずぅーっと好きな人」
姫華はゆっくり私の方を向いて笑った。
「……その好きな人って……誰?」
「……奈央だよ。私はあなたが好きなの。叶わないってわかってたの……でも好きなの! ……今の関係を崩したくない。けど友達でいるのも辛いの……」
姫華は私のことを真剣な眼差しで見てそういった。
「……それって、友達として……じゃないよね?」
「うん、そうだよ。……変だよね、女の子が女の子のことを好きだなんて……気持ち悪いよね」
姫華は苦笑いをしながらそういった。私はそれを見て心がズキッと痛んだ。
「……なんかじゃないよ」
「……? 奈央?」
「変でも気持ち悪くなんかないよ! 私も好きだよ、姫華のこと! 友達としてじゃなくて、一人の女の子として!!」
気がつくと、私は姫華のことを抱きしめていた。
「……なっ……奈央〜……! 嫌われるかと思った〜……もう話してくれないかと思ったよぉ〜……」
姫華は少し泣きながらそういった。
「なんで私が姫華を嫌うのよ〜……、私だって不安だったんだからねー?」
「そうなの……?」
姫華は潤んだ瞳で私を見つめてきた。
「うん、私も嫌われちゃうんじゃないかって心配でしょうがなかったんだ……。……姫華、目を閉じて……」
「……うん……」
姫華はそういって目を閉じた。私はゆっくりと顔を近づけ始めた。
――ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ
「ひっ!?」
「ごめん、私のケータイだ……」
私はテーブルに置いておいたケータイを取り、画面を見た。
そこには、私のお母さんの名前が写し出されていた。
お母さんめ……せっかくいいムードだったのにぃ〜……っ!!
「姫華ごめんね、お母さんに早く帰ってきなさいっていわれてたんだ……」
私は顔の前で両手を合わせて謝った。
「そっか……。じゃあ外まで見送ってくよ」
「……じゃあ姫華、また学校で会おうね!」
「うん……っ」
私は姫華の頬に軽くキスをした。
「〜〜!!」
「まっ、またねっ!」
そういって私は走って家に帰った。