「――奈央はいる? 好きな人」





部活帰り、姫華にいきなりこう聞かれた。





私に好きな人?





いるよ。





でも、言えないんだ。





だって私の好きな人、あなただもん。






私と姫華は女同士。





そろそろ告白しようかなーとは思ってるけど、今の関係を壊したくない。





でも、友達でいるのも辛いんだ。





「い……いないよ」





私は聞かれてから数秒後、こう答えた。






「えー? うっそだぁ! だって、顔赤いよー? いるんでしょー好きな人」





姫華は私の顔を指差してそういった。





「いっ……いないから!」





私はそういってさっきよりも速めに歩き始めた。





「あっ、ちょ、待ってよ奈央〜!」







ある日、1人で散歩をしていると、見覚えのある後ろ姿が。





「…………姫華?」





「……えっ、奈央!? どうしたの??」





「わ、私は散歩してる途中だよ! すごい偶然だね」





「だよね! よかったら今から私の家に来て遊ぶ?」







「うんっ!」





というわけで私は今、姫華の部屋にいる。





姫華の部屋はどちらかというとピンクで統一されている。ちなみに、私の部屋は水色だ。





「奈央、おまたせ〜! ジュースとお菓子持ってきたよ♪」





姫華は腕を器用に使って、ドアを開けた。






「姫華ありがとう♪ そういえばさ、佐野くんと叶が付き合ってるらしいよ!」





「やっぱり!? 私、ちょっとだけ付き合ってるのかな〜とは思ってたんだよね」





「……姫華は悲しくない……の? あんなに好きだったのに……」





そう。姫華はこの前まで、佐野くんのことが好きだったのだ。






「う……ん。悲しいよ? でも……」





「……でも?」





「でも今は違う好きな人がいるから。前からずぅーっと好きな人」





姫華はゆっくり私の方を向いて笑った。





「……その好きな人って……誰?」







「……奈央だよ。私はあなたが好きなの。叶わないってわかってたの……でも好きなの! ……今の関係を崩したくない。けど友達でいるのも辛いの……」





姫華は私のことを真剣な眼差しで見てそういった。





「……それって、友達として……じゃないよね?」





「うん、そうだよ。……変だよね、女の子が女の子のことを好きだなんて……気持ち悪いよね」






姫華は苦笑いをしながらそういった。私はそれを見て心がズキッと痛んだ。





「……なんかじゃないよ」





「……? 奈央?」





「変でも気持ち悪くなんかないよ! 私も好きだよ、姫華のこと! 友達としてじゃなくて、一人の女の子として!!」





気がつくと、私は姫華のことを抱きしめていた。