携帯の画面に表示された大量の着信履歴。それは全て彼の実家からだった。
しかし、留守電メッセージに残されていた声は彼の声ではなく、彼の母親の声だった。その声は震えていてか細かった。

「カオルが交通事故に遭ったそうです。今、東山病院に搬送されました。」
タクシーを拾い、急いで病院に向かった。

 しかし、もう遅かった。彼の顔には白い布が掛けられていた。
医師からは
「オートバイ運転中の事故による大量出血が死因」と告げられた。
 彼はオートバイに乗って、風のように走った。いつも、優しい笑顔と共に私にヘルメットを投げて、
「ほら、海を見に行こう。」
と言ってくれた彼。その笑顔を思い出すと胸が締め付けられるように痛む。
 白い布をめくり彼の顔を見ると、私の頬に一筋の涙がつたった。
「もう一度、笑ってよ。」