鏡の前の自分のにらめっこして10分間。
ボブだった髪もこの日の為に伸ばしてきて、憧れのツインテールができる。

「変じゃない・・・よね?」

制服のリボンの歪みを直して、如月(きさらぎ)って書いてある青色の名札をポケットにしまった。

「壱ー!千隼くん来てる!」

「は、はぁーい!今行く!!」

一昨日から用意してある黒いピカピカの鞄を持って玄関へ急ぐ。

ーガチャ。

「おはよう!千隼!」

「おはよ。」

自転車にまたがって私を待っていたのは、中学校から仲良しの川上千隼(かわかみちはや)。

中学2年生のときに千隼が近所に引っ越してきたのだ。

「千隼制服似合ってる!かっこいい!」

「ありがと。壱も似合ってるよ。」

いつもの顔で優しく微笑む千隼。

昔は男の子みたいで嫌いだった壱って名前も千隼のおかげで好きになった。

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『なぁ川上、コイツの名前、壱って言うんだぜ。女のクセに!』

・・・まただ。確かに、壱なんて名前、女の子にはなかなかいないけど。
この転校生にもなんか言われるのかな。

『へぇ。可愛い名前。』

・・・え?可愛いって言った??

『なんでだよ!男みたいなのに!』

『じゃあさ、いっちゃんって呼べばいいよ。それなら気になんないし。ね、いっちゃん?』

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それ以来、私のあだ名は「いっちゃん。」

千隼は周りがいっちゃんって呼び出したタイミングで私のこと壱って呼び出した。

「壱、早く乗って。遅れる。」

「あ、そかそか!」

素早く千隼の後ろに乗る。
漕ぎだそうとしたその時。

「あ、いっちゃん」

「へ??」

「髪、似合ってるよ」

そうにこって笑うと、前を向いてこぎだした。

・・・髪伸ばしてよかった。