結局お母さんと追突した車の運転手は助かったが、美香ちゃんは助けられなかった・・・
私の力不足で・・・
ごめんね ごめんね
いつか美華も同じようにしてしまうかもしれないという恐怖に襲われた。
お母さんが目を覚ました。
光希:「佐藤さん!分かりますか?」
久美子:「はい。美香は?」
・・・
サツキ:「・・・腹腔内出血で運ばれてきた直後心停止して約50分間心臓マッサージを続けましたが…
午前8時32分死亡を確認しました…。残念です。」
久美子:「何でよ・・・何で美香じゃなくて私を助けたのよ!・・・あの子はまだ7歳なのよ!」
久美子に胸ぐらを掴まれてもサツキは何も言わなかった。
光希がなんとかその場を収めたが久美子は泣き叫び、サツキは部屋を出ていった。
今にも涙がこぼれそうだった。必死に耐えた。
通りがかる人は不思議の思っているだろう。
「うっうっうっ…」
私はトイレに駆け込み一人で声を押し殺して泣いた。いつぶりだろうか…
もしあのとき…と後悔が絶えない
もしも私がもっと腕がよかったら・・・
最善を尽くして、どうしようもなかったことも分かってる。だけど…
なぜだろう?
患者さんが亡くなることは救命ではよくあること。
でも・・・
あの出来事から早1ヵ月。私は一人でたくさん涙をこぼした。
その一ヶ月の間もたくさんの患者さんが亡くなった。
今日佐藤さんが退院する。美香ちゃんのお葬式は終すでに終わったようだ。
会いに行くべきなのだろうけれど、光希先生に「やめといた方がいいかも。私が話しておくから」と言われて・・・
佐藤さんが近づいてくる。なんだろう?
久美子:「武藤先生・・・先日は大変…失礼しました…。うっうっうっうっ 最後まで… うっうっ 必死にマッサージ…してくれたって…うっうっ 聞きました・・・。」
久美子の夫:「ありがとうございました・・・」
美華と重ねていたのか、私はいつもの私ではなかった。泣いた。バカだ。泣きたいのは美香ちゃんなのに。ごめんね。美香ちゃん、私、もっと腕上げてこんな思いしなくていいように頑張るね。
悪いこと続くのだった。
朝、家に帰ると家が荒らされていた。
泥棒? あいつ?・・・・・・
だとしたらここにいるのは良くない。私は着替え貴重品を詰め込んで片付けた。
夕方までにすべて片付けた。
美華になんて言おう?・・・の前にどこ行こう?・・・
しばらく医局とホテルに泊まるか・・・
にしても貯金は全部捕られたし・・・
そんなことを考えていると美華が帰ってきた。
美華:「えっ?どうしたの?」
サツキ:「引っ越そうと思って!(あいつについては何も教えてないし、私たちの過去も教えるつもりはない) 」
美華:「まあいいけど・・・どこに?」
サツキ:「まだ決めてない・・・」
美華:「えっ?」
サツキ:「しばらくホテルに泊まろう?」
美華:「本当?ホテル行きたかったんだあ♪ おしゃれな♪」
早速家の契約を切って、ホテルに来たはいいけれど、お金どうしよう?
あっ! 夜の救急バイト(本当にあるんです!)すればなんとかなるでしょ!!
大変な毎日が始まった。
大学病院の仕事が終わると、近くの市民病院の救命で夜の当直バイトをする。
昼の給料の1.5倍くらいだから良いんだ。
問題が2つ。
1つは、美華がずっと一人だってこと。
一人で生きて生きていけるよう育てたから、家事は全部できるんだけど・・・
もう1つは、私の睡眠不足。
2.3日に1.2時間寝れたらいい方、という生活が続いている。貧血と微熱がずっと続いている。
なんとか栄養の点滴でもってる状態。でも美華をアイツから守るため。
裕翔先生と光希先生に心配されないよう、大嫌いな化粧で顔色を隠している。
新しい安全な家を見つけるまでの辛抱だ!
頑張ろう!
1ヵ月くらいこんな生活が続いている。
すべて責任感と気力でもっている状態。
今からバイト。
病院に入るといろんな人がジロジロ見てくる。
「めっちゃかわいいやん!」とか「モデルかなぁ?」とか。
私は医者だーと心で叫ぶ。
医局に入ろうにも、「ここは立ち入り禁止です!」と何回も看護師に止められ、いちいち名札と免許証をを見せて入る。
いい加減にしてよ!もう・・・
研修医のひそひそ話が聞こえてくる。
研修医A(男)「武藤っていうバイトの先生?18歳らしいよ!」
研修医B(女)「マジで?」
研修医C(男)「アメリカで医師免許取った天才らしいよ!」
研修医B(女)「顔じゃないの?どうせ・・・私より8歳も下なのに何かムカつくわ」
研修医A(男)「嫉妬かよ・・・実力で勝てばいいだろ」
研修医B(女)「分かってるわよ。今日一緒に当直だからしっかり見させていただくわ。フンッ」
研修医A(男)「まあ頑張れー」
バカか?
嫉妬してる暇がありゃ、腕磨けよ!
サツキ「今日はよろしくお願いします。」
涼太「はい。お願いします・・・って。あれ?あの時のフライトドクター?」
(か・・・かわいい! まさかこんなところでまた会うなんて!)
サツキ「あっあの時のドクターですか!あの男性は心臓発作が原因で、3週間後に退院されました。」
(あ あの男性の報告はした方がいいか。)
涼太「それはよかった!でもなんで君がここに?大学病院で働いているんだよね?」
(それはよかった!でもなんで当直バイトなんて?)
サツキ「はい。まあ色々ありまして。」
(めんどくさいなあ。本当)
看護師「涼太センセ~ この人と知り合いなんですかあ~?」
涼太 (う~わ 最悪・・・)
サツキ「以前救命現場でお会いしたことがあるだけです。では失礼します。」
(こういうのって本当面倒。)
スクラブに着替えて医局で待機。
医局で資料を読んでいた。
研修医B(女)「武藤先生?」
サツキ「はい。」
研修医B「なんで当直バイトなんてしてるんですかあ?」
サツキ「お話しする必要は無いと思いますが。」
研修医B「フンッ どうせ顔だけドクターで実力はそれほどでもないんでしょ?」
サツキ「お話はそれだけでしょうか?」
研修医B「あんた年下の癖に生意気なのよ!」
サツキ「私は実力だけで上がってきました。そんなグチグチ言っている暇があったら、少しでも腕磨く努力をするようお勧めします。」(バカの言うことは気にしない。そう気にしない。)
あ~あ やっぱり人って関わると面倒なだけだよね。