「俺、そんな変な顔してないよ」
私は、変人美容師に言った。


「今日、変ですよ、いつもより」

私がそう言った瞬間、変人美容師は私に近づき、顔が近くなるほど近づいてきて前から私の髪を触り始めた。



「やっぱ、俺のカットモデルだわ、いい髪質してんな」


変人美容師は、私の髪を撫で撫でし始めた。


「やめて下さい!何してるんですか!」


私は、下を向き顔を赤らめた。

「……嫌だってね」


変人美容師は、私から離れて言った。

「私、帰ります、今日はありがとうございました」


私は、礼をして玄関に向かおうとしたら、変人美容師は、ちょっと待ってと私の腕を掴んできた。

「なんですか?」


私は、少し声を低めに言った。

「あんたは、何でも頑張りすぎなんだよ焦らず、続ければ大丈夫だ」


変人美容師は、棒読みな声はいつもと同じであったが、美容室で見る変人美容師とは違く、優しく感じた。



これでも、がんばれと彼なりのエールを送っているのだろう。



「あ、ありがとうございます」

私は、礼を言った。


すると、変人美容師は
「あ、また、髪触らせてね」と言ってきた。