「あなたに言っても分からないわよ」


私は、そう言ってアパートの階段を上り始めた。



変人美容師は、私の後をついてくる。



「ちょっと、後ついてこないでよね!
私は三階なんだから」



変人美容師は、黙った。



「はあーやっと着いた。道のり長かった」



左を振り返ると、そこには変人美容師がいた。



「変人美容師!何故いる?」



私は、変人美容師に指差した。



「人のこと指差すな、それより、後で俺の部屋に来いよ」



変人美容師は、部屋の鍵を人差し指で回しながら私に言ってきた。



「…いや、何であなたの部屋に行かなくちゃいけないんですか」



「あんた、疲れてんだろう?俺の部屋に来て髪のマッサージすれば直るけど…」


「それが目的か、変人美容師」


「ふっ、俺だけのカットモデルがよくそんな文句言ってられるね」


変人美容師は、私に近づいて

「俺に髪を弄らせてくれ!俺もこの頃いい髪質と出会えてないんだ」


変人美容師は、溜息をついて私の髪を見た。