「いいえ、ゆっくりして下さい」


築地先生が帰ると、生徒達の丸つけをした。





いつから始めたか分からないけど、時間は7時半を回っていた。




「よし、半分は終わった!」



背筋をうーんと伸ばして周囲を見た。




私以外誰もいないことに気がついた。




いつから誰もいなかったんだろう。




疑問を感じながら、帰る準備をした。



電気を消して、私は職員専用の靴箱に行き、靴を履いた。



履いている時、微かな物音が聞こえた。

ガサガサ ガサガサ




「誰!出て来なさい」



大きい声で見えないものに言った。



「そんな大きい声が出すなよ。近所迷惑だぞ」


それは、朝比奈だった。

「朝比奈、帰ったんじゃなかったの?」


私は踵を地面に叩きつけながら、朝比奈に声を掛けた。




「いや、池脇先生のこと待ってたんだ」


靴箱の横に柱があり、その柱に朝比奈は横たわっていた。




「はあ?いや待ってなくていいわよ。…今日はあなたと二人で行かないって断ったよね。じゃあ、何で待ってたの?」




私は、朝比奈の所に近づいた。