「この前波ちゃんに言ったこと覚えてる?」

私は倉田さんに言われたことを思い出した。
高木さんが今までどんな道を歩んできたのか、恋人の死を聞いた。

「はい」

「旭は、こんな無表情してるけど。心の中では寂しいって思ってるような奴なんだ。波ちゃんは、旭の過去を受けとめて幸せにできる?」

すぐ、私は頷いた。

私を見た倉田さんは、ホッとしたように言った。

「それなら、良かった。旭を幸せにしてあげてね」

私は返事しようとした瞬間、高木さんは不機嫌そうに倉田さんに言った。

「おい!話と違うじゃねぇかよ!」

「なにが?」

「…お前、俺に言っておいて。翔太は、なんも言わないのかよ」

倉田さんは声をこもらせて、目を泳がせていた。

「いや、あの……」

「翔太は、波の友達に言いたいことあるんだってよ」

え? なに、望のこと?
私は倉田さんのことを見た。
そしたら、赤い顔をしていた。

「…アタシ?なに?」

「いや、別に何もないよ」

「翔太」

高木さんは、倉田さんの名前をただ呼んで倉田さんに言えと促していた。