高木さんは私の方を見て、黙り込んでいた。
そして、口を開いて私に言った。
「ああ…」
そう呟いて私の側まで来て抱きしめた。
「高木さん?」
高木さんは黙って私を抱きしめた。
それはなんだったのか分からないけど、私の身体にふれた高木さんの両手は冷たかった。
*
「来ないですね。望と倉田さん」
「ああ」
高木さんと私は立って待っていた。
高木さんは私の隣で無表情であった。
その表情から、何を考えてるのかわからなかった。
「連絡しました?倉田さんに?」
「したよ。来てなって打ったら、おっけーってスタンプできたよ」
そう言いながら高木さんはため息をついて、ただドアを真っ直ぐに見つめていた。
彼は何かを見据えているのか、複雑な表情をしていた。