高木さんは私の方を見て、黙り込んでいた。

そして、口を開いて私に言った。

「ああ…」
そう呟いて私の側まで来て抱きしめた。

「高木さん?」

高木さんは黙って私を抱きしめた。

それはなんだったのか分からないけど、私の身体にふれた高木さんの両手は冷たかった。



「来ないですね。望と倉田さん」

「ああ」
高木さんと私は立って待っていた。

高木さんは私の隣で無表情であった。

その表情から、何を考えてるのかわからなかった。

「連絡しました?倉田さんに?」

「したよ。来てなって打ったら、おっけーってスタンプできたよ」

そう言いながら高木さんはため息をついて、ただドアを真っ直ぐに見つめていた。

彼は何かを見据えているのか、複雑な表情をしていた。