「え？どういうこと？」
「…言葉のままだよ。…まあ、いいや。これからもよろしくな」
朝比奈は、手を差し出してきた。
なんと優しい目をしているのだろうか。
「うん」
私は手を出して、朝比奈と握手をした。
私はその手がなぜか温もりを感じさせつつも、強く握られた右手は何かを噛みしめるように思えた。
朝比奈は笑って、私に手を振ってその場から消えた。
右手に残った朝比奈の温もりは、まだ私の右手に残っている。
だけど、私の切ない思いだけが消えないのは何でなんだろう。
人は人に好かれるのを好むけど、誰かを愛すことだけは一人というのは愚かで愛おしい。
