私は無事授業を終えて、帰ろうとしたら
職員専用の玄関で朝比奈が待っていた。

「よぉ、じゃあ行こうか」

「…朝比奈。私…」

「なに?」

両手をズボンのポケットに入れて、私を覗くように目を小さくして微笑んでいた。
その笑みは……変人美容師と全く同じ気がした。

誰かを愛しているけど、心の中にある根本的な闇が消えない。

誰かを愛することが出来ない笑み。

「朝比奈……どうしたの?」

彼はただ笑っていた。
こんな笑みをする人ではなかった。

「うん? なに?なんでもないよ。さあ、行こう。今日ちょっと行きたいところあるんだけどいい?」

…朝比奈、なんで笑っているの。

「…いいけど。どこ行くの?」

「着くまで内緒!」

行こうと朝比奈は私の手首を掴み、走り出した。

私に何を言いたいの、朝比奈。

「ちょ、ちょっと」