私のマンションに帰ろうとしたら
前の方に暗い中で人影が見えた。
「誰だ?」
コツンコツンと私のヒールの音がする中、その人影も私の方に近づいてくる。
「え? 本当に誰?」
ピカピカと電柱の光が照らされ虫が光によって呼び寄せていた。
だが、暗くてよく見えない。
誰?
「どうした?こんなとこで」
男性の声だ。
でも、よくわからない。
「え? 誰ですか」
「隣に住んでいる人も忘れたのか。記憶力悪いな、池脇さん」
へ、変人美容師!
「……なっ。へ、変人美容師なんでここに」
さっきまで、変人美容師の話になっていたから私のことを察知して話しかけてきたのかと思えた。
「まだ俺のこと、変人美容師って呼んでんの。やめてくんないかな」
「はあ?人それぞれでしょ。それより、何してるんですか?」
私は反抗的になり、両手に腰をつき変人美容師に言った。
「はあ、相変わらずですな。少し心配してたのに。まあいいや」
そう言って変人美容師は、階段に上ろうとしていた。
「私を心配してくれてたんですか?なんで」
「なんでって。それも分からないんですか?馬鹿ですね」
変人美容師は私の話を立ち止まっては聞いてくれず階段を上っていたので、私もすかさず上った。
タンタンと階段の音がする中
「私、なんかしました? 」
変人美容師は黙ったまま部屋に入ろうとしていた。
だが、私は変人美容師の肩をつかんだ。