「はあ、実はね、あの校長が私のこと嫌いとか言い始めて昨日ケンカしたの」
岩沼先生は、もう、全くよと言って不機嫌そうにコンビニ弁当を頬張っていた。
「なんで、校長先生。岩沼先生にそんなこと悪いこと言ったんですか」
望は、右手に玉子を箸でつかみながら、岩沼先生に聞いていた。
「そう。あの男が悪いのよ。あの男、私が一生懸命に作った料理をおいしくないとか言って。いつも美味しいって食べてくれるのに。昨日、すごい変だったんだのよ! 浮気してるでしょって問い詰めたら、怒られた」
岩沼先生は、一気に言いたいことを言ったせいか呼吸が荒くなっていた。
保健室は、岩沼先生しか話していなかったせいか音も声も聞こえないほど静かになった。
望は、えーとと困惑していた。
あいていた窓から風が気持ち良く私たちに当たってくる。
それは、なんと幸せな時間だろうか。
私は目を瞑りながら、口を開いた。
「岩沼先生。愛されてますよ。校長は、絶対岩沼先生の料理、美味しかったんですよ。いつも食べている味だからわからなかったけど、やっぱり美味しかったんじゃないんですか? 」
「……そうなのかな? でもなんで素直に言わないかな。喧嘩する時、一言も」
頬をフーセンのように膨らませて照れくさそうに私に言っていた。