それをきっかけに、吉岡ベニと話すようになった。

名前で呼び合う仲まで、発展した。

そして授業の休み時間になると、吉岡ベニの席に行って話をしていた。

すると、周りは俺と吉岡ベニが付き合っているという噂が広がった。

旭もその噂を知って、お昼休みになると、旭が俺に聞いてきた。

「翔太さ、噂本当なの?」

「え?」

「噂だよ」
旭が俺のことで、質問してくるのは珍しいことなので、俺は驚いた。

「……いや、付き合ってないけど」

ダッシュでまた売店から買ってきたのか息切れをしながらチョコチップパンをかじって、旭は俺に言ってきた。

「そっか……」

旭の表情は安心したかのようにホッとしているように見えた。

「……旭さ、ベニに興味なかったじゃん。どうしたの?」

旭は、もう一つ買ってきた紅茶を口に加えて、無表情で俺を見てきた。

「……そうだな。吉岡ベニとは、近所が近いんだ。それで何度か学校まで一緒に通ってた」

「……そんなの、聞いてないよ」