俺は、まだ知らなかった。
旭は、俺がそんな事言う前に吉岡ベニが好きだったっていうことを。
俺は吉岡ベニと話すきっかけを作ろうと奮闘していた。
同じクラスだし、話す機会はあると思われるが、男子と女子と分かれているときっかけがなければ話さない。
だから、自分で考えて行動して、吉岡ベニとお近づきになりたいのだ。
そんな時、そうだと独り言を言って、右手で指パッチンをした。
俺はある考えが思い浮かんだ。
翌日
「……吉岡ベニさんですよね?」
俺はなんとやっと吉岡ベニに話しかけられた。
よっしゃーと心の中でガッツポーズを決めた。
「え? あ、はい。そうですけど」
吉岡ベニは、困ったように俺を見ていた。
「俺、同じクラスの倉田翔太って言います。知ってますか?」