「……なんで分かるんですか?」
「なんとなく。……波ちゃんも悩んでるということなら旭が言ったのかと思って」
倉田さんはやっぱりかと呟いて、下を俯いていた。
「……そうですね」
私は返事をしてから、倉田さんを見た。
話してくれるよね? と私に話してくれるかなと優しい目で訴えてきた。
その目に嘘はつけなかった。
「……高木さんに私抱きしめられたんです。ベニと名前を呼びながら」
私は下を俯きながら、望と倉田さんにあった事実を話した。
すると、倉田さんはベニという名前に反応した。
「……ベニ」
その名前を知っているのか、無表情で考え事をしていた。
それに異変を感じたのか、望は
「なに、ベニって? 倉田さん」
彼は昔にタイムスリップしたかのように、一瞬思い出にふけているように見えた。
そして望の反応にビクッとしながら、私たちを見た。
「ベニ。そっか、分かったよ」
「分かったよって。倉田さんだけ自己満足されても困るんだけど……」
「……ベニはね。旭の恋人」