変人美容師は、まっちゃんの隣にいた私を見てから、ふーんと声をださずに自分の中で納得していた。

「付き合っていた? ってことは今は……」

「想像通りですよ。でも、あなたには関係のないことですよね。なんでそんなに突っ込んでくるんですか?」


「……そうですね。俺自身も分からないです。ただ、頭によぎるんですよ。こいつが……」

変人美容師は両目を左に向けて、悲しいような嬉しいような複雑な表情をしていた。

「あなた、波のこと好きなんですか?私は、波が好きです」

私がいるとは知らずにこの男二人は、私のことが好きかを聞きあっている。

私がいることを知って、なぜそんなことを聞く。

しかも、こんな夜に……

なんか私が恥ずかしくなってきた。

「好きねぇ。松岡良平さんだっけ。好きっていうこと、そんな軽々しく言わない方がいいよ。じゃあ、これで俺は失礼するよ」

「ちょっ、お前待って」
まっちゃんがそういいかけようとしたら、変人美容師はマンションの階段を上っていた。