「……母親からだった」

朝比奈は私を見てため息をついていた。

「お母様は、なんだって」

「……いや、東京遊びに来たから俺の家に泊まるからって話」

「良かったじゃない」

「何にも良くないよ! 池脇先生といいとこだったのにー」

子どもみたいに朝比奈は拗ねていた。

「まあ、いいや。池脇先生。僕、諦めませんか。次も覚悟してて下さい」


朝比奈は私の頭を撫でてから、私を置いて帰っていた。

嵐が去ったように……

「なんなのよ。もう」

私は崖から崩れ落ちるかのように、身体が下に崩れ落ちていた。

誰もいない職員室でヘナヘナになりながらも、独り言を呟いた。


「まさか、朝比奈が私のこと……」

そんなことないよね、

自意識過剰だよね。

でも、あんな朝比奈初めて見たんだよな。

そんなことを思いながら、カバンを開いた。

携帯を出して、時間を確認した。
すると、今19時50分。