そんなことを考えていると
朝比奈と離れた距離で話していたが、急に私の方に近づいてきた。

「ちょ、ちょっと近い」


「これでも、男性として意識しませんか?池脇先生」


私は顔を上げるとすぐに、朝比奈の顔があった。


「……あのね、朝比奈。私はあなたのことは弟のように思っている。だけど、男としてはそんな風には見られない」

私は朝比奈と向き合って言った。


そうすると朝比奈は、両手を私の肩において一歩離れた。

分かってくれたみたいね。じゃあ、帰ろうかしら。

「……じゃあ、私帰るから」


私はデスクに置いてあったカバンを右手に持とうとした瞬間、朝比奈が私の左手首を掴んできた。


「ちょっと……」

「池脇先生、僕そんな優しい人じゃないですよ」

朝比奈はそう言って私の左手首を強引に引っ張り、朝比奈の胸に私の顔は覆われた。

「……ヤダ……離して」

「……僕、そんなにダメですか?」

朝比奈は、いつもより低い声で私に問いかけた。

私が朝比奈を傷つけたからだ。

でも、いきなり突然のことで……頭が回らない。

朝比奈は、私の身体を力強く抱きしめてきた。

前、抱きしめたよりも……ずっと大切にしているよと言っているかのように。