「よぉ、池脇先生。何してるんですか?」
この声は、後ろを振り向かなくても分かる。
朝比奈だ。
「….…子ども達の絵、見てただけだよ。
朝比奈こそ、今日いつもより早いわね。どうしたの?」
「……いや……片付けなくちゃいけない仕事あったからさ」
朝比奈は、目を泳がせていた。
見るからに、朝比奈の様子がおかしい。
絶対、仕事で早く来たのではない。
では、なぜ早くきたのだろう。
……予測がつかない。
「……あ、そうなんだ。じゃあ、早くきて仕事片付いてよかったね」
ここは、適当に返答した。
「……ああ」
朝比奈は返事をしてから、何か言いたそうに私を見ていた。
だが、何も言わずに自分の机に戻った。
今日の朝比奈は、珍しく大人しい。