変人美容師がいきなり私の手を掴んで、私を抱きしめてきた。
それは今いるのはいつも見る変人美容師ではなく、悲しさを背負った男性であった。
私は変人美容師に、離して下さいと言っても聞いてくれない。
なんで、私にこんなことを……
「……紅。俺、もうどうしたらいいんだ」
紅? 誰?
私は大きい声で、変人美容師に発した。
「……離して下さい!」
「……っ俺……」
周りを見渡して変人美容師は、今の状況を確認していた。
「ごめん。……さっきのは気にしないでくれ。今日は帰っていいよ。じゃあ」
変人美容師は頭を抱えてキッチンに向かって、冷蔵庫からペットボトルを取り出していた。
私は呆然と座ったまま動けないでいた。
だが、私は我に返ってカバンを取り出して変人美容師に黙ったまま帰っていた。
私はあの変人美容師の行為は、後から気づくのであった。
彼が傷ついていることに……