いつものように広場に向かったある日、1人の女子学生が座っていた。オルガンの音は聞こえない。珍しく今日は来てないのかと思いつつも読書のためにカバンから本を取り出そうとしたら、近くに人の気配がした。顔を上げれば先ほどの女子学生である。


「あのっ!いつもこの曜日のこの時間、ここにいらっしゃいますよね?!私実はいつもオルガン、弾いてるんです!いつもあなたがここにいらっしゃることに気づいてからは観客ができたようですごくうれしくて!一度お話したかったんです!」

突然のことに驚き、まともな返事ができずにいたら女子学生は、やっぱり迷惑ですよね、私のオルガンを聞いてるかもわからないしとつぶやいた。

「そんなことありません。僕もあんな繊細な音を紡いでいるのはどんな子なのか興味があった。実をいうと一度だけ覗いたことがあったんです。」