部屋に入った彼女が荷物を置いている間に、私はベッドに飛び乗って
定位置にしているピンクのクッションに腰を下ろした。

鈴の音が弾む。

「あー、久しぶりに帰って来たぁー」

私は、その隣に彼女が腰をおろして、上半身だけベッドに倒すのを眺めていた。

深く息を吐き、無言で天井を見つめる彼女。
さっきは笑顔でおかあさんと話していたけれど、少し疲れてるみたいだ。

彼女がふと、ベッドサイドに置いていた写真立てを手に取り呟いた。

「いいかげん、この写真も捨てなきゃね・・・・」

そう言う彼女の瞳は、静かだけど悲しい色をしている。

私もなんだか悲しくなって、小さく鳴きながら、彼女の肩に頬をすりよせた。

そんな私に、彼女は少しだけほほ笑んで、片手で耳の後ろを掻いてくれた。

「きなこ。あとで話聞いてくれる?」

もちろんよ、みいちゃん。
みいちゃんのお話なら、私、いくらでも聞くから。

そのとき、リビングからお母さんの声が響いた。

「瑞季!お茶用意したわよ!プリン、食べないの?」

「食べる食べる!今、行くから!」

体を起こした彼女は、写真立てを元の場所に戻そうとして一瞬考えたあとに、
いつもは立てているそれを、パタンと倒すとリビングへと移動した。